目的と手段はまったくの別物である。そんなのは誰でもわかるようなことのようでいて、実際の仕事上でそのことを明確に意識することは案外難しい。
たとえば。
法で定められた統計の集計作業は目的だろうか、手段だろうか。必ずやらなければいけない集計なのだから、その作業そのものが目的…なのだろうか。
たとえば。
あるモノやコトのプロモーションとして、大きなイベントを仕掛けることは目的だろうか、手段だろうか。イベントには多大な労力がかかるからそれが目的…なんだろうか。
人は得てして目の前の膨大な事務作業、処理作業に忙殺され、「何のためにやっているのか」を見失っているように思う。作業を終えることが一つのゴールになってしまいがちだ。しかし、大抵の作業はもちろん手段である。何かの目的を達成するための作業であることがほとんどのハズだ。
先の事例であれば、統計は「何かを読み解く」ことが目的であるハズだ。そのための手段として、調査を行い、集計を行い、分析をしているのだ。
イベントも然り。
モノやコトを知ってもらう、あるいは買ってもらうことが目的のハズだ。いや、もっと大きな「会社を成長させる」「社会を動かす」といったことが目的かもしれない。そのための手段として、プロモーションがあり、イベントがあるのだ。
得てして目的と手段は混同しがちだ。目的と手段を混同することの何が問題かというと、「どこで満足するか」のポイントがまったく変わってしまうということだ。統計の例で言えば、下手をすると調査票を集めて、データを整理することを目的にしてしまい、集計作業が終わっただけで満足してしまうことになる。膨大な手間をかけ、大勢の人を巻き込んで、何一つ「読み解く」ことができないのだとしたら、こんなに無駄なことはない。
もう一度自分の目の前にある仕事について考えてみよう。今目の前にある集計作業の、イベントの、会議の、予算の、目的は何だろう。
自分のこの1日の事務作業、処理作業で、世の中の何が動いていくのだろう。