宮宮コンビから宮宮の絆へ〜その1

2013-01-24 (木)

地方公務員 宮崎県

もう5年近く前の話。

 

宮城県と宮崎県は名前がよく似ているからなんかやれ!…というあまりにあまりな指示が、知事→副知事経由で降りてきたことがあった。副知事からの直電を受けた上司が、ぼくを呼んで、「そういうことだから。なんか考えて」と。むちゃぶり!

 

どうやら、宮城県(以下わかりやすいように宮ギ)で行われた宮崎(同じく宮ザキ)の農産物キャンペーンのあと、東国原さんが村井宮ギ県知事を表敬した際、「昔からよく名前を間違えられますよねえ」という話になり、「まあこれも何かの縁ですから、何かできるといいですねえ」と”軽く”盛り上がったらしい。

 

えーっと。それは世間一般では、単なる雑談、あるいは社交辞令と呼ばれるものでは? 名前が似ているというだけで一体何ができるというのか。むきー!――などという反論をできるハズもない。私は悲しき宮仕え。指示を受けてしばらくの間は、宮ギ県側の担当者である食産業振興課のN氏と頭を抱える日々が続いた。

 

その頃、うちの農政部が、山形県のさくらんぼと宮ザキのマンゴーが時期を同じくして店頭を飾るので、高級フルーツ店と一緒に共同キャンペーンを張っていた。オープニングイベントでは、両県に由来のある上杉鷹山の名言から「なせばなる産地協力宣言」をし、今後の協力を誓った。会場が六本木ヒルズということもあり、それなりに注目を集め、メディアも賑わせていた。

 

宮ギ県N氏とは「まあ、そういうキャンペーン的なものがあればなあ。なにか両県の共通項にできるネタを探すしかないっすね~」となどと話していた。宮ザキのカツオ漁船が気仙沼で水揚げしてることとか(だからどうした)、宮ギの米に宮ザキの牛をのせた牛丼とか(逆も可)、どうにもしっくりくるネタが浮かばない。そうこうするうち、宮ギ県N氏から「何をやるかはあとで考えるとして、まずは、宮ザキ宮ギ食産業振興協定を締結するのはどうでしょう?」という提案があった(一応気をつかっていただいて宮ザキが前にw)。

 

うーん。協定書か。協定ってことは契約みたいなものだから、将来に渡って拘束されるってことだよなあ。それはつらいなあ。だってまだ何ひとつネタが浮かばないんだもの…。「何かやれ」の「何か」を誰か教えてくれないものか。うーんうーん。

 

ネタを出してはボツるを繰り返しつつ、引き続き宮ギ県N氏と意見交換する中で、あるとき「去年、キリンビールのキャンペーンに村井知事が呼ばれた(宮ギ県に工場がある縁で)」という情報が出てきた。なんと!キリンビールとな!

 

実は、さらにさかのぼること1年前、キリンビールの幹部S氏と、宮ザキの和食屋で同席する機会があって、初対面にも関わらず意気投合したことがあった。CMの話からの流れで「ぼくは森本千絵さんが大好きなんですよ~」という話をしたところ、S氏が「おお。いいよな千絵ちゃん。今、彼女はアートディレクションで5本の指に入る存在なんだよ!」と熱弁。ふたりで、いかに千絵ちゃんが凄いか話で盛り上がったのだった。

 

出会った当時、ぼくは別の部署にいたのだけれど、数カ月後に「みやざきアピール課」に異動したとき、S氏から「甲斐ちゃん、なんか一緒に仕事ができるといいねえ」と声をかけて貰ったりもしていた。それを思い出したのだった。

 

当時、キリンビールは、毎年、全国各地の名産品が当たる「日本のうまい!」キャンペーンを展開していた。そして近々、首都圏のホテルを会場にして、今年のキャンペーン内容を大々的に記者発表するという。うむ。この場所を貸して貰えたら、何かできそうな気がする。

 

「日本のうまい!」キャンペーンには当然、宮ギ県、宮ザキ県の名産品も使われている。村井知事に加えて、東国原さんが行けばキリンビールさんも喜んでくれるかもしれないし、こちもステージをお借りしてPRができる。いいかも。

 

さっそく企画書をつくり、忙しいS氏の時間をムリヤリ空けてもらって本社を訪ねた。両県の知事がそれぞれお国自慢をし、宮ギ宮ザキはもちろん、日本にはおいしいものがいっぱい、おいしいビールと一緒に楽しみましょう、という企画でどうでしょう!とプレゼンした。

 

イベントまで時間が迫っているタイミングではあったけれど、S氏の返事は一発OK。「面白い!それやろうよ!」。直前ということもあり、発表会ではすでに予定されてた企画があったものの、なんとかぼくの企画も潜り込ませて、全体の調整をすることとなった。

 

さて。今度は、両知事によるお国自慢のやり方を工夫しなくてはいけない。そしてキリンビールのキャンペーンとも、不自然にならないように両立させたかった。

 

そこで、宮ギ県N氏から提案のあった「宮ギ宮ザキ食産業振興協定」をもう一度練りなおしてみることを思いついた。「協定」はあまりに行政チックだから、山形のときと同じように「宣言」というのはどうだろう。「宣言」であれば、なんか「イキオイだけで言ってみました」的な感じもあるし、将来、いい企画がなければ、そのままなんとなくフェードアウトもしやすいんじゃないか。うん。ファイト一発的なものがよいな。2県で協力してのお国自慢宣言。それがいい。

 

宣言の内容はどうしよう。宮ギ県N氏から提案のあった「食産業振興」というテーマ自体は悪いわけじゃない。遠隔地にあるから観光での協力はハードルが高い。食での協力の方がまだ現実的だ。それに「日本のうまい!」というキャンペーンのテイストも少し入れるとより一層自然に受け止めてもらえるかも…

 

そんなことを考えながら、とりあえずワープロでぱたぱたと「宣言文」を書いてみた。書き始めたら、意外にもすらすらと書けて、小1時間ぐらいで案文ができあがった。

 

タイトルは「宮宮はうまい!」宣言。そして宮ギ・宮ザキ両県はこれから「宮宮コンビ」として、両県のおいしいものをアピールしてく…という内容のものだった(アピール課だけにw)。

 

できあがった文章を読み返して、思わず自分で「宮宮コンビ」って、お笑いかよ!とツッコミつつも、さっそく宮ギ県N氏にメールしてみる。「キリンビールのキャンペーンの件ですが、以前提案頂いたような協定的なものをやりたいと思います。ただ、東国原のキャラクターイメージもありますので、もう少しユルい感じの「宣言」文をつくってみました。いかがでしょうか?」

 

…ところが、いつもなら電話なりメールなりですぐにレスポンスのある宮ギ県N氏からは、いっこうに連絡が来なかった。んー。ふざけすぎたかなあ。でも、これがNGだったら、書類のカタチでは難しいかも。そのときは、ステージトークぐらいでお茶を濁すかなあ…。

 

そんな風に気を揉んでいたら、1週間後、ようやく宮ギ県N氏から電話があった。

 

「甲斐さん、お待たせしました!」

…ああどうもどうも。

「決裁とれました!」

…は、はあ?

「知事決裁とれました!」

ち、知事!こっちはまだ直属の上司にも話してないよ!

「甲斐さん、一点だけ事後報告で申し訳ないのですが…」

…な、なになに。

「文章中に一部方言が入っているのですが、あれは県北部だけで使われるもので、少し宮ギ全体で通じるものに修正させていただきました。申し訳ありませんがご了承ください!」

…そ、そこかよ!

…全然かわまないけど、いや、知事決裁はかまうよ!

 

超〜慌てて、上司に報告。

 

「えーっとですね。先方が、ど~うしてもこういう宣言をしたいらしいのですもう決まったことらしいのです私は少しふざけすぎではないかという懸念もするわけですですがですがもう文章も直せない段階ということでこれでなんとかよろしく哀愁…もごもごもご」。

 

文章を読んだ上司は一言。

「面白い!いーんじゃない!」 …よ、よかった~。課長、ここにハンコください。

 

ということで、キリンビールキャンペーンという大勢のマスコミが集まる場面で、今回のキャンペーンに使われている宮ギの米、宮ザキの牛肉を使ってのお国自慢をしつつ、両県で「宮宮はうまい!」宣言を行うことができた。キリンビール側が元々仕込んでいた「くいだおれ太郎」さんともうまいことコラボすることができ、翌日はマスコミ各紙を大いににぎわすイベントすることができた。キリンビール社長からは東国原さん宛に丁寧な自筆の礼状も届いた。よかったよかった。

 

でもそれで終わったわけではなかった。後日談。

 

このキャンペーンは、当然、宮ギ・宮ザキの両県でも報道された。イベントの数日後、宮ギ県N氏からほくほくした声で電話があった。

 

「甲斐さん!このたびは大変お世話になりました。地元でもメディアに大きく取り上げられて、知事も喜んでいらっしゃいました。これからもよろしくお願いします! 記事もわかる範囲で集めましたのであとでメールで送りますね。」

 

お礼とともに新聞の切り抜きがPDFで送られてきた。そして、最初のページを見た瞬間、ぼくは卒倒しそうになった。宮ギ県の地元紙「河北新報」1面。そこにどどーんと「宮宮コンビ」の文字が躍っていたのである! お笑いかよ! しかも、ぼくがふふふん♪と鼻歌歌いながら書いた宣言文が、全文掲載されていたという悪夢! うぎゃあああああ…。

 

まあ、とっくに時効であるから、宣言文も掲載しておく。1000km以上離れていて、なにかと接点の薄かった宮ギ県と宮ザキ県との交流は、こうやってスタートしていったのであった。

 

 

「宮宮はうまい!」宣言

 

「みやぎ」「みやざき」の両県は、豊富な野菜や果物、高品質な肉類、新鮮な魚介類、あるいは、かたや日本酒、かたや焼酎といった加工品に至るまで、日本列島の北と南から、とびきりの「うまい!」を提供しています。

 

両県は、「宮」という字を共有しているだけでなく、「みやぎ」「みやざき」という発音も類似していることから、これまで他県の方々から「どっちがどっち?」と混同されることが多々ありました。

 

そのたびに、両県民は、「なしておらいが宮崎なのっしゃ?」「まこち、宮城じゃねっちゃが」という思いをしてきたものです。

 

そこで、「みやぎ」「みやざき」両県は、今後、「宮宮コンビ」としてタッグを組み、さまざまな機会を通じて、それぞれのとっておきの「うまい!」を紹介し、その味、その香り、その食感などを通じて、日本国民のハートを鷲づかみにし、「さすが宮城!」「なるほど宮崎!」と喜んで頂けるよう、それぞれの魅力を強くアピールしていくことをここに宣言します。

 

宮城県知事 村井嘉浩

宮崎県知事 東国原英夫

 

 

[13.1.18]

・話題の787機が欠航。前日は日程調整で苦労した。ひとつ遅い便にて東京へ。京急線でまさかの人身事故>各駅停車運転。なんとかギリギリで予定していた新幹線へ。仙台駅でチーバくん発見(笑)。宮崎出身の千葉のキャラクターが仙台で頑張るの図。ひとつ後の新幹線で東京から戻ってきた野呂さんと駅で合流し、東口で畠山さんと合流。残雪のこる仙台は寒い。

・まずは名取市閖上へ。日和山へ登る。雪で覆われた田園地帯…のような風景だが、多くの住宅が流された場所。愕然。唖然。言葉がでない。周辺の道は工事用のトラックがひっきりなしに走る。日和山より少し高い土盛は、あとで「もしここに新たに人が住めるようにするにはこのぐらいの高さが必要」という仮設土盛だと知る。これだけ広大な土地にこの土盛はありえない→人は住めない、という現実。

・山元町へ。着いてみると、阿部さん(宮ギ県から町へ派遣中)が宮ザキ県内の市町村から派遣されている職員を集めてくれていた。都農町の日髙さんは土木技師。昨年の4月から派遣されているという。宮ザキ市からは4人。若い事務屋さんたちで、学校の建て替えなどの事務に携わっているとのこと。入れ替わり立ち替り、宮ザキからの派遣は続いている。阿部さんの案内で中浜小学校へ。津波対策で嵩上げした土地に建設されていたが、2Fの天井近くまで水が来たため、先生と生徒は屋根裏に逃げ込んでなんとか難を逃れたとか。全員が助かった施設であるため、遺産として残す予定という。すっかり日が暮れていて視界が利かず、雪と思った場所で水たまりで、左足水没。つ、冷たい…。

・阿部さんと別れ、仙台市内へ。「(株)石巻津田水産にてケンチョーズと。中澤さんによる復興状況のプレゼン。斎藤さん。関口さん。テーブル対抗のセリでは、特選鮮魚を競り落とすとお好みの調理法で出してくれる。ぼくがクロイソを600円でゲットし、刺身と煮付けに。これがバカうま。分厚い刺身やら牡蠣(バケツ蒸し!)やらえらく美味い。三陸の魚すげー。

・畠山さんと2人で2次会「○たけ」。変態な日本酒がいろいろで楽しい。途中からリエちゃん合流。店主の石山くんが「宝船」を吟じてくれた。東北選抜だけあってすげえ上手くて感動。楽しくて飲み過ぎる。

 

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